月にうさぎがいるといわれるのはなぜ?

2023.11.21

月にうさぎがいるといわれるのはなぜ?

綺麗な月が夜空に表われると多くの人が、餅つきをしているうさぎを探したことがあるのではないでしょうか。日本ではなぜ月にうさぎがいて、餅つきをしているといわれているのか気になりますよね。この記事では、月にうさぎがいると言われる理由と月のうさぎが餅つきをしている謎について詳しく説明していきます。

月にうさぎがいるといわれている理由は?

月とうさぎ

◆月うさぎ伝説

月にうさぎがいる、という話はこどもも知る有名な話の一つです。

日本では大昔から言い伝えられてきた話ですが、ではなぜ月にうさぎがいるといわれるようになったのでしょう。

その理由の原点はインドの仏典であるジャータカ神話の『月うさぎ伝説』であるといわれています。

『月うさぎ伝説』とは、なにか。月うさぎ伝説には諸説ありますが代表的なものをご紹介します。

『月うさぎ伝説』には、うさぎ、さる、きつねの3匹と、老人の姿になった帝釈天という神様が登場します。

ある日、帝釈天(神様)は老人になり、うさぎ、さる、きつねの3匹のそれぞれの前に現れます。老人の姿になった帝釈天は、3匹をそれぞれ試すため、「なにか食べられるものが欲しい」と、食べ物を持ってくるようお願います。

すると、さるは木の実を、きつねは魚を、老人に用意しました。うさぎはというと、一生懸命食べ物を探しましたが、少量の草しか見つからず、食べ物らしい食べ物を老人に持ってくることができませんでした。

うさぎは、「草だけでは申し訳ない」と悩んだうさぎは、老人に火を用意するようにお願いします。火が用意されるとうさぎは、「私が焼けたら私を食べてください」と老人に言い、うさぎ自ら火の中に飛び込みます。自分の身を老人(神様)に捧げたのです。

帝釈天はうさぎのこの勇姿を全ての生き物のお手本にするため、月の中にうさぎを描きました。

このようなお話が『月うさぎ伝説』であり、月にうさぎがいると言われるきっかけになったのです。この『月うさぎ伝説』はインドから中国へ、そして日本に伝わりました。


月のうさぎが餅つきしているのはなぜ?

月

◆月の模様が餅つきうさぎに見える

なぜ月のうさぎが餅つきをしているといわれるようになったのでしょう。

実際に月にうさぎが存在しているのではなく、地球から見える月の模様が餅つきをしていううさぎに見えたことから言い伝えたれてきました。

月の模様というのは、月を見たときに黒く見える部分のことを指します。

この黒い部分は『月の海』と呼ばれる場所で、月のマグマが噴き出して、月表面にある凸凹に溶岩が固まったできた場所なのです。

そのため、科学的にいうと月のうさぎの正体は、マグマが溶けて固まった場所。地球から見た月の模様です。

月は黒くない部分もありますね。明るく見える場所はなめらかなように見えますが、黒い部分より凸凹しているのです。
反対に黒い部分は、凸凹に溶岩が入り込んで固まっているので平坦になっています。

話は少し逸れましたが、でもなぜ月の模様のうさぎは餅をついているのか。
『月うさぎ伝説』のなかには、餅をついたうさぎの話は出てきません。

月のうさぎが餅つきをしているといわれるようになったきっかけは、インドではなく中国が影響していると考えられています。

古来中国では、月のうさぎは「杵と臼を使って不老不死の薬を作っている」と解釈されるようになりました。この話がきっかけとなり、正確な時期は不明ですが、江戸時代頃から日本では、月のウサギは餅つきをしていると、言われ始めたと考えられています。

杵と臼は日本ではお餅つきのために使われるものでしたので、日本人は「杵と臼を使うのは餅。だから、うさぎは餅つきをしている」という話になったという説があります。

また、日本で満月を表す言葉に『望月』があり、この『もちづき』がだんだんと変化していき『もちつき』になり、うさぎが餅つきをしているという解釈になったと考えられています。

◆うさぎが餅つきをしているのは日本だけ?

月の模様を『うさぎが餅つきをしている』とイメージするのは日本だけではありません。

月は常に地球に同じ面(表)を向けて公転しています。そのため、日本から見える月は常に表側の模様が見えているのです。日本に近い韓国でも、月の模様を『餅をついているうさぎ』と解釈する人たちが多いようです。

一方、他の国では、

・中国は『カニ』、『不老不死の薬を作っているうさぎ』、『ヒキガエル』
・モンゴルは『犬』
・アラビアは『吠えるライオン』
・東ヨーロッパ、北アメリカは『髪の長い女性』
・インドネシアは『編み物をしている女性』
・ベトナムは『木の下で休む男性』
・オーストリアは『男性が灯りを点滅させている』
・南アメリカは『ワニ』、『ロバ』
・オランダは『悪いことをした報いとして幽閉された男性』
・ドイツは『薪を担ぐ男』

とそれぞれ解釈が異なります。

同じ月をみていても、世界ではこんなに月の模様の解釈がさまざまなのは面白いですよね。
月の模様の解釈には、各国の文化や神話が強く影響しているといわれています。
そして、月の模様を見る時間帯によっても見え方が大きく異なるのも解釈が変わってくる理由の一つでもあります。

月の模様は明け方(西の空)、夕方(東の空)、真夜中(南の空)で変わって見えるのです。

餅をついているうさぎは日本と韓国のみでしたが、きっと日本や韓国でも見る時間を変えると、餅つきをしているうさぎの他に見えてくるイメージがあるかもしれませんね。

各国共通していることは、世界中の人々が月を見上げ、様々なイメージを膨らませているということです。

今度月を見上げるときには、同じタイミングで他の国で同じ月を見ている人がいると考えてみてください。きっとほっこりした気持ちになりますよ。


うさぎと月にはどんな関係がある?

月

うさぎと月の関係は、インドのジャータカ神話から始まり、日本に伝えられ、現在もなお、うさぎと月はいつも一緒に考えられています。

そして、うさぎを飼育している飼い主たちの間では、うさぎが天国に行くことを「月に帰る」と表現します。
この言葉は、誰が作り、いつから言われるようになったのかは定かではありません。ですが、この言葉には、亡くなったうさぎのことを想う飼い主の深い気持ちが詰まっていますね。

亡くなってしまってもうさぎが月から見守ってくれている、月のなかで仲間と一緒に楽しく過ごしている、と飼い主たちが思えるだけでも、うさぎを亡くした悲しみが少し和らぐような気がします。

うさぎと月の関係は、これだけではなく子ども達の大好きな絵本によく登場します。

・童心社『おつきみうさぎ』作:中川ひろたか 絵:村上康成
・金の星社『つきのうさぎ』文・絵:いもとようこ
・ポプラ社『月のうさぎのおかしやさん』作:岡野薫子 絵:若山雪江

などです。

うさぎと月がセットで描かれているのは絵本だけではありません。
日本の美術の中でもうさぎと月は一緒に描かれることが多いのです。

・うさぎと秋草
・うさぎと木賊
などが代表的です。

一見、秋草も木賊も「月」とは関係のないように見えますが、どちらも月を連想させることから月と深い関わりがあるのです。

例えば、
秋草は秋に花を咲かせる植物のことを指しています。そして秋は満月や中秋の名月の季節でもあり、「月」を連想させます。

木賊は、細長くかたい植物のことを指し、物を磨くためにつかわれていたことから、「磨いたように輝く月」と読む和歌の中に月と共に登場します。

うさぎと秋草や木賊の間にも「月」があるのですが、月を除いて描かれることが多いのであまり月と無関係のようにみえても掘り下げていくと実はうさぎが登場していることが多いのです。

うさぎと月はこれだけではありません。
うさぎは幸運をもたらす動物といわれる理由にも「月」が関係しています。

うさぎは月との関係が深いことから、月つまりツキ(良い運)を引き寄せると考えられ、幸運をもたらす動物と言われるようになったのです。特に、満月は黄金に輝くようにみえることから、うさぎは金運アップの象徴とされています。

このように、うさぎと月はインドから中国、日本へと伝わる課程からともに登場し、さまざまな伝統的な作品のなかにもセットで登場するほど、切り離すことができない関係深い2つということです。


まとめ

月

月にうさぎがいるといわれるようになった原点は、インドの神話『月うさぎ伝説』です。目の前で苦しむ人のために自分の身を捧げたうさぎ。その勇姿をすべての生き物の手本にするため、月にうさぎが描かれたといわれています。また、月の模様を日本では餅つきをしているうさぎ、中国では不老不死の薬を作るうさぎなどと解釈し、月を見上げて楽しむようになりました。うさぎと月の関係は大昔から繋がっていて、和歌や着物にもともに登場していました。満月の日には月を見上げ、月のうさぎの観察をしてみてください。



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